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右肩上がりです。
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HN:
いとう
性別:
男性
自己紹介:
すてきエンジニヤ(25♂)
好き:酒と女とバイクとロック
あとジョージアの長いやつ
嫌い:もぐりの人。あと若者。
メールはお気軽に下記まで。
itooo_engineering@yahoo.co.jp
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7月26日 AM9:00
連日の雨が冗談だったかのように、空は青く高かった。
穴の空いたエンジニアブーツ、厚い牛革のパンツを履き男はドアを静かに開ける。
7月の炎天に黒革を纏い佇む。 汗、汗、汗、汗。
男は、日が高くなれば想像を絶する熱と不快が下半身を襲うことをよく理解していた。
彼は気狂いではない。
男は、バイク乗りだった。
洒落たアパートに寄り添うように彼のオートバイは停めてあった。
雨水の溜まった薄汚れたネズミ色のカバーを、女の下着を脱がせるようにそっと外すと
鈍く空を反射しながら、黒いオートバイが剥き出しになった。
GPZ900R 90年型 輸出401仕様。
それは男の生まれた年に世界最速とされたモンスターマシンであった。
それは男の初恋の頃、平凡な性能となっていた。
大きく、重く、古い。
それでも男はこのオートバイが好きだった。
すこし車体のぐるりを見て回ったのち、革手袋をはめ、オフホワイトのヘルメットをかむる。
静かにまたがると、チョークレバーを少し引き、セルスイッチに手をかけた。
軽いセルモーター音の後、何かにつまずくようにガッとエンジンは目を醒ます。
集合管からは地鳴りのような重低音が抵抗なく吐き出され、
空き地でボール遊びをする学童が一斉に目を向ける。
男は水温計が35℃を指すと同時にギアを1速に蹴り込んだ。
子等に軽く手を振ると、ゆっくりと発進し、回転計は3000rpm以上を指さなかった。
水温計が70を指す頃、片側2車線の国道でアクセルを全開にした900は10000rpmの咆哮を上げ一瞬で車列の先頭に踊りだす。
すでに陶酔の極にいた男は、車列のなかにツートンがいたことを認識していたが、アクセルを緩める理由が見つからなかった。
力だ。スピードだ。
油をガスに換え、熱を動きに換え
熱い空気を突き破りながら900は、ある場所を目指していた。
AM9:30
ようやくエンジンが止まったのは小さな商店の前だった。
男は待っていた、仲間の到着を。
静かに紫煙を燻らせ、佇む彼は・・・・恐れていた。
仲間から告げられた、この7月26日の旅の目的地はあまりに常識を逸脱していた。
「願わくば冗談であって欲しい。」
男がそう考えていた矢先、特徴のある排気音が街の喧騒に割って入った。
ヤツだ・・・・。
サンセットオレンジの眩しいDトラッカーが駐車場に滑り込んだ。
フロントタイヤを軽く車止めにぶつけ止め、颯爽と背の高い車体から跳ね降りたのは良く日に焼けた男。
髑髏が描かれたオフロードヘルメットを外すと、軽く900に会釈をし早々に商店でパンを買いぱくつき始めた。
Dトラッカーに刻まれた傷跡はライダーがかなりの手練れであることを無言のうちに語っていた。
Dトラッカーの男は900の男とは知己であり、幾多の死線を共にしてきた。
しかし、今回の目的地は今までの修羅場とは明らかに異質であった。
地図を広げると、Dトラッカーの男は淡々とルートの説明を始めた。
山間部から沿岸に抜けること、2、3のモトクロスコースの視察をすること、
地図は蛍光ペンでしっかりとマークされている。
そして最後に、恐ろしい目的地の名を口にした。
「×××x×キャッスル・・・・・」
おおよそ20を5つ過ぎたエンジニア2人に落とせるような城ではない。
「×××x×キャッスル・・・・・本気だったのか・・・・・」
900の男は耐え難い不安と背徳感に襲われたが、最後の目的地のことは忘れ、ただ「走り」に集中することにした。
AM10:00-
2人は、ただ遮二無二走り続けていた。
軽量なDトラッカーを先頭に2台は、息の合ったコンビネーションで山間を縫うように駆け抜けてゆく。
Dトラッカーはリーンアウトフォームのライダーと完全な調和をなし、危なげなく孤を描く。しかし
とんでもないスピードでコーナー群を軽快に抜けてゆく。
900はその200kgを超える車体には似つかわしくないバンク角で、前車のラインをトレースする。
狭隘路でDトラッカーを追いかけまわすのは、ジェット機でゼロ戦とドッグファイトするようなものだ。
しかし、しっかりと熱を湛えた900のリアタイヤは100馬力を超えるパワーを受け止め、流れる気配もない。
90度左コーナーで一挙にアクセルを捻る。
エア・リッチで一瞬息を付くが、すぐに野蛮な咆哮を上げ車体を押し出し、パワーがバンクとバランスする。
「最高だ・・・・乗れている・・・・・」
Dトラッカーのハイグリップタイヤが弾き飛ばした小石を受けながら
恍惚の笑みを浮かべ男はただただコーナーを貪った。
スピードに潜む神は
コンマ1秒の快楽と生命とを秤にかけることを強要する。
それは錆びついた命を削りとばし、輝く地をむき出しにする行為だ。
錆に侵され肥え太り酸化物の塊にとして生命を終えるものは、真っ赤な火花を散らしながら磨かれ消えていくものを笑う。 しかし男達は一笑に附されることを厭わない。
PM4:00
限りない孤を描き
ランナーズハイの果てに男達はその城に辿り着いた。
おしまい
連日の雨が冗談だったかのように、空は青く高かった。
穴の空いたエンジニアブーツ、厚い牛革のパンツを履き男はドアを静かに開ける。
7月の炎天に黒革を纏い佇む。 汗、汗、汗、汗。
男は、日が高くなれば想像を絶する熱と不快が下半身を襲うことをよく理解していた。
彼は気狂いではない。
男は、バイク乗りだった。
洒落たアパートに寄り添うように彼のオートバイは停めてあった。
雨水の溜まった薄汚れたネズミ色のカバーを、女の下着を脱がせるようにそっと外すと
鈍く空を反射しながら、黒いオートバイが剥き出しになった。
GPZ900R 90年型 輸出401仕様。
それは男の生まれた年に世界最速とされたモンスターマシンであった。
それは男の初恋の頃、平凡な性能となっていた。
大きく、重く、古い。
それでも男はこのオートバイが好きだった。
すこし車体のぐるりを見て回ったのち、革手袋をはめ、オフホワイトのヘルメットをかむる。
静かにまたがると、チョークレバーを少し引き、セルスイッチに手をかけた。
軽いセルモーター音の後、何かにつまずくようにガッとエンジンは目を醒ます。
集合管からは地鳴りのような重低音が抵抗なく吐き出され、
空き地でボール遊びをする学童が一斉に目を向ける。
男は水温計が35℃を指すと同時にギアを1速に蹴り込んだ。
子等に軽く手を振ると、ゆっくりと発進し、回転計は3000rpm以上を指さなかった。
水温計が70を指す頃、片側2車線の国道でアクセルを全開にした900は10000rpmの咆哮を上げ一瞬で車列の先頭に踊りだす。
すでに陶酔の極にいた男は、車列のなかにツートンがいたことを認識していたが、アクセルを緩める理由が見つからなかった。
力だ。スピードだ。
油をガスに換え、熱を動きに換え
熱い空気を突き破りながら900は、ある場所を目指していた。
AM9:30
ようやくエンジンが止まったのは小さな商店の前だった。
男は待っていた、仲間の到着を。
静かに紫煙を燻らせ、佇む彼は・・・・恐れていた。
仲間から告げられた、この7月26日の旅の目的地はあまりに常識を逸脱していた。
「願わくば冗談であって欲しい。」
男がそう考えていた矢先、特徴のある排気音が街の喧騒に割って入った。
ヤツだ・・・・。
サンセットオレンジの眩しいDトラッカーが駐車場に滑り込んだ。
フロントタイヤを軽く車止めにぶつけ止め、颯爽と背の高い車体から跳ね降りたのは良く日に焼けた男。
髑髏が描かれたオフロードヘルメットを外すと、軽く900に会釈をし早々に商店でパンを買いぱくつき始めた。
Dトラッカーに刻まれた傷跡はライダーがかなりの手練れであることを無言のうちに語っていた。
Dトラッカーの男は900の男とは知己であり、幾多の死線を共にしてきた。
しかし、今回の目的地は今までの修羅場とは明らかに異質であった。
地図を広げると、Dトラッカーの男は淡々とルートの説明を始めた。
山間部から沿岸に抜けること、2、3のモトクロスコースの視察をすること、
地図は蛍光ペンでしっかりとマークされている。
そして最後に、恐ろしい目的地の名を口にした。
「×××x×キャッスル・・・・・」
おおよそ20を5つ過ぎたエンジニア2人に落とせるような城ではない。
「×××x×キャッスル・・・・・本気だったのか・・・・・」
900の男は耐え難い不安と背徳感に襲われたが、最後の目的地のことは忘れ、ただ「走り」に集中することにした。
AM10:00-
2人は、ただ遮二無二走り続けていた。
軽量なDトラッカーを先頭に2台は、息の合ったコンビネーションで山間を縫うように駆け抜けてゆく。
Dトラッカーはリーンアウトフォームのライダーと完全な調和をなし、危なげなく孤を描く。しかし
とんでもないスピードでコーナー群を軽快に抜けてゆく。
900はその200kgを超える車体には似つかわしくないバンク角で、前車のラインをトレースする。
狭隘路でDトラッカーを追いかけまわすのは、ジェット機でゼロ戦とドッグファイトするようなものだ。
しかし、しっかりと熱を湛えた900のリアタイヤは100馬力を超えるパワーを受け止め、流れる気配もない。
90度左コーナーで一挙にアクセルを捻る。
エア・リッチで一瞬息を付くが、すぐに野蛮な咆哮を上げ車体を押し出し、パワーがバンクとバランスする。
「最高だ・・・・乗れている・・・・・」
Dトラッカーのハイグリップタイヤが弾き飛ばした小石を受けながら
恍惚の笑みを浮かべ男はただただコーナーを貪った。
スピードに潜む神は
コンマ1秒の快楽と生命とを秤にかけることを強要する。
それは錆びついた命を削りとばし、輝く地をむき出しにする行為だ。
錆に侵され肥え太り酸化物の塊にとして生命を終えるものは、真っ赤な火花を散らしながら磨かれ消えていくものを笑う。 しかし男達は一笑に附されることを厭わない。
PM4:00
限りない孤を描き
ランナーズハイの果てに男達はその城に辿り着いた。
おしまい
PR
あの時のすべてを描写してる。
おれたちの目指したものは間違っちゃいない。
これが明日への糧となるだろぅ。。。
すごく読ませるクールな文章だったのに
写真でいうとすげぇバカっぽくなるのね。